私が以前働いてた会社には中村店長(仮名)という女性の上司がいました。彼女は小学生低学年の一人息子がいるシングルマザーで、離婚理由は夫の暴力だったそうです。

会社はブラック企業でしたが、中村店長は就職に困っていた所を採用してもらった恩を社長に感じていたため、毎日深夜遅くまで働いていました。

ある日、中村店長は息子のレン君が自分の財布からお金を盗んでいることに気づきます。レン君を問い詰めてお金の使い道を聞くと、意外な使い方をしていました。

その後、何度注意してもレン君は財布からお金を盗むため、彼女はとても悩んでいました。私は子供時代に親の愛情を常に疑いながら育ったので、彼女の話を聞いたりレン君の表情を見ていて色々思うところがありました。

当時の状況と子供が親の財布からお金を盗む理由と対策方法を漫画とともに紹介します。

子供の性格と家庭環境

レン君は鍵っ子で、学校から帰ったら家で留守番しているように言われていました。しかし、レン君は寂しくなると店長が帰る30分前くらいに事務所に笑顔で現れ、仕事が終わるまでジュースを飲んで待っていました。

私にとってレン君は『会社にたまに現れる笑顔が可愛い男の子』という印象でしたが、店長は仕事場に自分の子供が来るのは公私混同だと感じていたみたいで申し訳なさそうにしていました。

レン君は一人っ子だったので家で待っているのは退屈だし、寂しかったのかもしれません。実家は他県だったので、面倒を見てくれる人は他にいなかったようです。

最近は子連れ出勤を政府が推進していますが、当時の職場は休憩室で大きい声を出すと客席に筒抜けでとても子供を長時間遊ばせることはできませんでした。レン君は活発な年頃の男の子だったので、暇を持て余すと客席に来てソファーの上で飛び跳ねたり社員やお客様に話しかけたりし始めました。

その度に店長は手を止めて注意しなければならないので、イライラして「もうこんなことするなら来ないで!」と怒っていました。

たまに店長の仕事がすぐに終わって「帰ろうか」と声をかけられた時は、レン君の表情がパアッと明るくなって、手をつないで嬉しそうに帰る姿が印象的でした。

きっかけは仕事の残業とストレス

働いていた会社には繁盛期があり、その時期はいつもよりもさらに帰宅時間が遅くなりました。日常の業務は残業してこなすしかなく、帰宅時間は毎日21~22時で遅い時は0時を周るることもありました。

レン君が仕事場に現れる頻度は少しずつ増えてきていましたが、ある日店長がレン君に「忙しいから職場にはもう来るな」と伝えたみたいでパッタリと来なくなりました。

会社にはいくつかの支店があり、店同士の売上を競わせる風潮がありました。私達が働く支店は人通りが多い場所で家賃が高かったため、他店よりも多い売上を求められるストレスが店長にはあったみたいです。

店長の携帯が鳴っていても無視している時はレン君からの電話でした。無視しているとすぐ会社に電話がかかってきて、店長につなぐと「あともう少しで帰るから寝てて」と低い声で手短に切っていました。

月末になると「売上があといくら足りない」と店長はイライラしていることが多く、少し早い時間(20時頃)に帰ろうとすると「ノルマがまだ終わってないよね?」と呼び止められて社員全員が帰りにくい雰囲気になっていました。

そんな空気の中、レン君が久しぶりに店に現れると店長は「会社に来るなって言ったでしょ!」と大声で怒鳴り、驚いたレン君は泣き出してしまいました。その日以降、レン君が会社に遊びに来ることはなくなりました。

財布からお金を盗んだ証拠を掴む方法

ある日、中村店長が休憩中に「最近、私の財布からお金がなくなるんだけど…」と思いつめた様子でつぶやきました。

仕事場には鍵付きのロッカーがあるため、「レンが犯人だと思う」と息子を疑っている状況に落ち込んでいました。

気がつくと財布から1万円や5千円札などの紙幣が抜き取られていたそうです。親の財布からお金を盗んでいるから許されているものの、これが他人の財布になると窃盗罪という犯罪になってしまいます。

レン君を孫のようにかわいがっていた事務員のおばちゃんの舘さんは「お金を盗るのは悪いことよ!すぐにやめさせないと…」と心配していました。

『レン君が盗んだ』という証拠がないため、どうやって話を切り出したらいいか店長は悩んでいて、社員全員で現場を抑えるためのアイデアを出し合いました。

その結果、以下の3つの方法がよいのではないかという結果になりました。

財布からお金を盗んだ証拠を掴む方法

  • 財布をエナメルにして指紋を取る
  • 隠しカメラを家に設置する
  • 財布を置いて隠れて見守る

財布をエナメルにして指紋を取る方法は、過去に私のバイト先で盗難被害が出た時に警察から教えてもらった方法です。子供相手なら指紋の大きさが違うので、間接証拠として財布を触ったかどうかがわかります。

しかしこの方法は盗ったという証拠にはならないので、相手の自白頼みになります。指紋は『間接証拠』なのでしらを切る可能性があるため、実際に現場を押さえて言い逃れができない『直接証拠』を掴むのが効果的です。

隠しカメラは4,000円程度から通販で購入できますが、お金がかかるので直接的な証拠が掴めない時の最終手段にしたほうがいいでしょう。映る位置を事前に確認してスマートフォンでビデオ撮影することも可能です。

結局店長は『財布を置いて隠れて見守る』という方法を選びました。仕事が休みの日の夜に「お風呂に入る」とレン君に伝えて財布をカバンの上に置き、壁に隠れてドアの隙間から見守ることにしたのです。

すると、レン君は慣れた様子で財布からお金を抜き取りました。店長はその瞬間に「レン!」と声をかけ、カッとなってレン君の頬を平手で殴り、泣いて謝るレン君にどうしてお金を盗ったのか問い詰めました。

盗んだお金の使い道

財布からお金を盗む現場を抑えてお金の使い道を問い詰めた結果、レン君は自分が欲しいものを買ったわけではなく、友達にお菓子やおもちゃを買う目的でお金を使っていました。

友達数人と駄菓子屋さんに行って「何でも買っていいよ」と言い、好きなだけお菓子を買ってあげることに喜びを感じていたのです。おもちゃ屋さんでゲームやオモチャを買ってあげたり、ゲームセンターでお金を払ってあげたりもしていたそうです。

小学生のお小遣いは限られているので、湯水のようにお金を出してくれるレン君に同級生の友達は喜んで寄ってきたのでしょう。

中村店長は「自分の物を買っていた方がマシだった。私が遅くまで働いたお金で他人の子供の物を買っていたなんて…」とショックを受けていました。

その後もレン君は財布からお金を盗むことをやめませんでした。ある日、盗んだお金で電車に乗って一人で他県まで行き、終着駅で保護されて警察から電話がかかってきたのです。

店長はレン君を片道3時間以上かけて車で迎えに行き、次の日は会社でぐったりと疲れ切った様子でした。

店長がレン君を殴ったのは『悪いことをしたとわからせるための最終手段』だったようで、これ以上どうやって叱ったらいいのかわからず悩んでいました。

証拠を掴んでも財布からお金を盗むことをやめず、行き先のない旅に出て自分を困らせるレン君に、「もう何を考えているのか全然わからない…」と店長は頭を抱えていました。

子供が親の財布からお金を盗んだ理由

レン君は母親が仕事に集中するあまり電話を無視されたり、「職場に来るな」と言われたことで「自分は母親にとって必要な存在ではないのかもしれない」と疑いを持ち始めたのでしょう。

店長は責任感が強く真面目な人間だったので、売上を上げるために社員全員を一人でサポートしていました。誰かが残っていれば一緒に遅くまで残業していたため、一番最後まで店にいました。

仕事がない時にレン君に貧しい思いをさせたことがあったみたいで、バイトから結果を出して店長にまで出世し、お金を稼ぐために頑張っていました。

それはレン君の将来の学費のためでもあったのですが、まだ幼い彼にとって仕事は母親との時間を奪っていくだけのものでしかありあません。仕事で得られるお金の価値なんて、働いたことのない子供には理解できないのです。

私もそうでしたが、親の愛情不足を感じると愛情を確かめるために子供は親を困らせることをし始めます。嫌なことをしても自分を見放さないかどうかを親にテストするのです。

友達にお金を使ったのは、お金を使えば簡単に相手に必要としてもらえるからでしょう。

レン君はいろんな人が行き交う電車の中で一人何を考えていたのか想像すると、私はレン君が『お母さん僕はここにいるよ!ちゃんと僕を見て!』というメッセージを必死に出しているような気がして、胸が苦しくなりました。

子供にお金を盗ませない対策方法

子供にお金を盗ませないために、まずは親子でちゃんと話し合いをすることが先だと思います。中村親子の場合は以下のようなことを話し合った方がいいでしょう。

  • 親にどうしてほしいのか聞く
  • 子供が大切だということを伝える
  • お金をあげて遊ぶのは友達じゃないと教える
  • 何時に帰ってきてほしいか聞く
  • 親からもまめに連絡をする
  • 月のお小遣いを決めて自分でやりくりする
  • 「次にお金を盗ったら金庫を買う」と先に伝える
  • 第三者に意見を求める
  • 家族で遊ぶ時間を作る

子供への愛情の伝え方

一番大切なのは『子供が大切だ』と伝えることです。仕事に集中しすぎて子供を放置すると、親が嫌がることをして愛情を試そうとする子供もいます。子供が鬱陶しいと感じるほどの干渉はやりすぎですが、親の適度な干渉は絶対に必要です。

子供が親に対して不満に感じていることや、親にどうしてほしいのかを思いつくだけ聞いてあげましょう。普段高圧的な態度で子供と接していたり、意見を言っても無駄だと子供に思わせていると話すことを放棄してしまう可能性があるので、子供が安心する言葉をたくさんかけてあげてください。

仕事で早く帰れないなど現実的に変えられないこともありますが、できるだけ早く帰ろうと努力してそれを子供に伝えることはできます。

例えば帰る直前に連絡を入れるだけだと、子供は何時に帰ってくるのかわからず不安です。「今日はこういう仕事がまだあるから帰るのは21時頃になると思うけどゴメンね。なるべく早く帰るから待っててね」と事前に帰宅時間を伝えることによって、子供は『自分は親に気にかけてもらえている』という気持ちになれます。

レン君がお店に来た時に店長が怒ったのは『夜中に出歩くのが危険だから』という理由もあったのですが、ただ「店に来るな」と叱るだけだと子供は突き放されたように感じてしまいます。「これくらい言わなくてもわかる」と思わずに、丁寧に自分の気持ちを伝えた方が子供も安心できます。

金庫を買う前に話し合う内容

お金を子供に盗ませない方法として『金庫を買う』という選択肢がありますが、子供に何も言わずに金庫を買うのはよくありません。

子供の立場からすると『親は自分のことを全然信用していない。泥棒あつかいされている』と感じてしまうからです。

もちろん原因は子供が財布からお金を盗むからなのですが、子供からすると親が自分を不安にさせたり、お小遣いが足りないことなどが原因なのです。

金庫を買う場合は「次にお金を盗ったら金庫を買う」と事前に伝えてから購入しましょう。金庫を買うことはお互いにとってデメリットしかないので、できるだけ買わずに済む方法を事前に子供と話し合うのです。

月のお小遣いが足りないなら、子供が自発的にルールを守ろうと行動できるように話し合ってお互いが納得できる金額を決めるのがいいでしょう。

お金を盗む理由を冷静に聞く

レン君の場合は自発的に友達にお金を使っていましたが、いじめで脅されて親の財布からお金を盗んでいる可能性もあるので事情がわかるまでは怒りにまかせて殴ったりしないようにしてください。

中村店長は夫がDVだったこともあってレン君に手を上げないようにしていましたが、現場を見た時は「情けなくてカッとなってレン君の頬を叩いてしまった」と話していました。

現場を見たり子供が「やっていない」と咄嗟に嘘をついたりしても、冷静に話ができるように心の準備をしておいたほうがいいです。

子供も後ろめたいことをしているのはわかっていますが、そうさせている原因が親にもある可能性があるので一方的に子供だけ責めるのは間違っています。

第三者に意見を聞く

店長はずっと「子供が自分の財布からお金を盗っているなんて恥ずかしくて言えない」と考えていたようで、自分で何とか解決しようとしていました。

しかし、どうしていいかわからず気持ち的に追い詰められていったのです。皆にアイデアを聞いて現場を押さえてからもお金を盗ることをやめず、何度強く叱ってもやめないのでしばらく一人で悩んでいたみたいです。

こんな時は第三者に意見を聞くことがおすすめです。店長は社員に相談したことで色んな解決方法を提案してもらうことができました。話すだけでも心のストレスが軽くなるので、一人で抱え込まずに相談してみることをおすすめします。

事務員のおばちゃんは「レン君と旅行でも行っておいで!有給全然使ってないでしょ!」と店長にアドバイスしていました。確かに店長が有給を使う日なんて1日も見たことがありませんでした。

店長はレン君との時間をなるべくたくさん作るようにアドバイスをされ、社員も店長が早く帰れるように協力しつつ売上を伸ばせるように努力するようになりました。

ここまで親にかまってもらえなかった子供の立場から書かせて頂きましたが、シングルマザーで男の子を働きながら育てるのは本当に大変なのだと自分が母親になった今は実感しています。

夫婦の場合は辛くなったら交代できますが、一人だとストレスを子供にぶつける訳にも行かず余計に追い詰められてしまうのではないでしょうか。本人が助けを求める方法以外に、周りも気遣ってあげることが大切だと思います。

まとめ

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その後、店長はレン君との関係を考え直し、できるだけ仕事を早く切り上げるようになりました。すると財布からお金を盗むこともなくなったそうです。

さらに再婚して3人家族になったことで、店長も精神的に安定したように見えました。結婚した旦那さんは優しい男性で、レン君がとても懐いてくれたため再婚を決意したそうです。

私はその会社を辞め、中村店長とは年賀状をやりとりしたり、たまにLINEをする仲です。彼女が結婚して数年後にはレン君に弟ができ、年賀状の写真は愛おしそうに弟と映るレン君の笑顔でいっぱいでした。

夜道を一人で歩いてお母さんに会い来たレン君は母親の顔色を伺っている弱気な印象でしたが、年賀状のレン君は満面の笑みを浮かべて年の離れた弟を後ろから抱きしめていました。

親の財布からお金を盗んでいた男の子がやっと自分が望む愛情と居場所を手に入れたんだなと感じて私も見ていて嬉しい気持ちになりました。

子供が親の財布からお金を盗む理由はいろいろあると思いますが、子供を責めるだけではなく子供にそうさせてしまった原因を考え、一緒に解決していくことが大切なのではないでしょうか。

愛情とは目に見えない不確かなものです。言葉や態度で愛情が感じられないと、子供は不安でいっぱいになります。

子供にとって親は自分を育ててくれる唯一の存在なので、できるだけ愛情表現をしてあげてください。お金は使えば減りますが、愛情はいくら与えても減るものではありません。

この記事を書いた人

猫野きなこ猫野きなこ

「猫と暮らしながら趣味でお絵かきしてるライターです。

ブログでは過去の体験談を漫画に描いたり、ダイエットレシピを公開しています。

ブログ:きなこ猫のスッキリ生活 
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